ふるさと
さかな




  母はいつも眠る前に鍋に水をいれ、煮干をいれる
  朝になると
  はりがね色の文化釜でご飯を炊く
  そのかたわらで
  煮干のだしでおみそ汁がつくられる
  その朝が私のふるさと


  鍋と煮干と文化釜

  火をつけて
  ふたがカタカタいいだし
  釜からは湯気があわのようにでる
  火を弱める
  ふたがしずかになる

  だしをこす
  豆腐をいれる
  みそをいれる

  転々と移ったどの家でも
  その朝があった

  ふるさとは
  そうやって朝の中にあった


自由詩 ふるさと Copyright さかな 2005-10-04 08:06:24
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