骸骨鳥
umineko

あの頃は良かった
あの頃は幸せだった
あの頃はただ空を舞うだけで
皆の視線を一身に受け
私はただゆっくりとゆけばよかった

いつのまにか
鳥が空にあるのはすっかり当たり前になってしまった
公園の木立を気を引くように
甲高く鳴いて弧を描いても
どうしたことだ
みんな歩くのに忙しい

そして冬が来て
木の葉が散るように私の羽は抜け落ちて
私はとぼとぼと
公園のまん中を歩いている
子供がふたり
私に目を止めた
自分より弱き者を見定める
動物の目

子供らの腕が
私の肩に触れるその瞬間
私はありったけの力で両手をかいた
するとどうだろう
次の瞬間
私の身体は宙に浮く
仰天して叫ぶ
子供らの手を抜けて

大人達は今日も空を見上げている
羽のない鳥が飛んでいる
大泉公園の楡の木の上
もはや羽も肉も削げ落ち
骸骨となった鳥が飛んでいる
 
 
 
 



自由詩 骸骨鳥 Copyright umineko 2005-10-01 23:32:03
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