実刑
カンチェルスキス




 取り締まることのできない光の減少が
 駅のホームに加算されていき
 歩みと停止を繰り返す人影を貶める
 遠近法を失い胸まで迫ってくる欠落に喘ぐのだ
 やがて満たされる黒の描写の内に
 瀕死の酸素呼吸の泡が上昇する
 誰もが単色に埋没されていくことを否定できない
 重力を感じたそばから
 名づけようのない液体が怠惰や精気とともに
 漏れはじめて
 なけなしの身体は既に重力に反応することができない


 俺はここで何者かによって殺され続けているのだ


 敷き詰められた砂利が沈黙を保ち続ける幸運を
 一顧だにしない


 容赦なく続いていくレールの表面にも
 あらゆる減少が
 なめらかに進んでゆく


 見届けてるうちになくした視力を
 そこらへんにでも転がってるように想い続けた


 表面張力


 古ぼけた時計台の時計が盗まれて久しいのだ





 
 


自由詩 実刑 Copyright カンチェルスキス 2005-09-30 00:40:36
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