ふるえ Ⅳ
木立 悟
海 空 無
ゆっくりと夜のなかを
大きな鳥が通りすぎる
雨が空をかけのぼる
光が空にこだまする
夜に隠れた者の影が
木々の間を埋めてゆく
半身だけの囚われ人が
言葉を求めて川を歩く
明くる日には石になるひとつひとつを
朝の土から拾いあげ
光のように並べ変える
音を信じる者と
言葉を信じる者とが
手と手を結び 原を見ている
風はふいにはじまり
ひとしきり水を追ったあと
ほどけるように消えてゆく
原も
原をめぐるものたちも
無のなかに立つ囚われ人も
結ばれた手の内に終わり
結ばれた手の内にはじまってゆく