僕はガリポリを知らなかった
士狼(銀)
倒れて佇む静かな兵士
鼓動も呼吸も途切れたままで
過酷な大地の腐敗は進む
スレンダーボディが自慢だった若い兵士は
その面影を微塵も残さなかった
生きていた証さえ残せなかった
彼と一緒に彼の人生は塵々に焼失し
軽やかに一陣の風に吹き飛ばされていった
家畜のように体は膨らみ破裂した腕
腹に溜めた死ガスを吐き出させようと
かつての同僚が銃爪を引く
連合軍は撤退
残された戦地には白い墓が夕日を背に並んでいる
一面に並び黙っている
風が遊んでも誘っても黙っている
十字架の前に植えられた向日葵は
首を落とし泣く
一斉にうなだれて風と共に泣く
悲しみに満ちた水平線
どこからか挽歌が聴こえる
墓守の老いた大尉は
『トルコの勝利は称賛に値する』と
胸を張り
そして笑った
向日葵は首を落としたまま