夏のフィラメント
望月 ゆき
雷鳴にかきけされてく「さよなら」と微笑みながら消え逝く夏よ
画用紙の上でちぎれんばかり手をふるは向日葵それともきみか
欠けてゆく月も満ちてゆく月も紙一重に映す海鏡
終息の気配を乗せてカブリオレ 海沿い、国道、信号の赤
鍵穴を見つけて鍵が見当たらず3日遅れで旅立つ夏よ
午後のイメージが色あせてきみの上降りくる夜の涼しさ、ためいき
オーダーメイドの夏をまた来年も纏うため有酸素運動
午後6時の青のとばりが加速して明日の今を追い越すまでに
波の手ざわりと青のにおい残してきみを連れ去る夏の輪郭
高くなる空を追いかけ発光す「ばいばい、またね」夏のフィラメント