たけしと消しゴム
suzu

国語の授業を担当している
教育実習の女の先生
ニキビの後がちょっと残っている
笑顔が素敵な女の先生


授業はいつものように教科書の音読
順番がぼくに来て
決められた範囲を音読していたら
突然先生が ワッ と泣き出す


「すいません・・・ちょと失礼します・・・」と言って
先生は教室から出て行き
困った顔をして後を追って行く担任


しばらくして
いくぶんか落ち着きを取り戻して帰ってきた先生
赤い目をした先生
授業は何事もなかったかのように再開して
チャイムが鳴って先生は教室を出て行く


先生が泣き出したのは
ぼくが読んだ「―――そこでたけし君と別れました」という部分
クラスの大半は先生が泣き出したとき顔に『?』が浮かんでいたけど
読んでいたぼくは分かった


休み時間
ぼくは消しゴムにペンで『バカ』と書き
三階の教室の窓から思いきり投げた
それを見て友達は「なにやってんの?」と聞いてきたので
ぼくは「たけしに当ててやろうと思って」と答えた

何のことだか分からない友達を尻目にぼくは席に着き

泣かせたほうが悪いに決まってる と思ったり
せめてぼくが先生と同い年くらいだったらなぁ と思ったり


消しゴムが吸い込まれていった
五月の青空


自由詩 たけしと消しゴム Copyright suzu 2005-09-24 17:41:45
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