夜の透明な命
石川和広

夕飯を食べたあと
タバコを吸っていると
ささと風がふいた
まぼろしにささやきかけたように

近くでおんながくしゃみした

僕の物思いの雨の中を
通りすぎた
あれら透明な命はなんだったか

きれいなもので
汚れていても
きれいなもので

僕はそこから遠ざかった毎日です

静かに手を洗いました
その中でも妄念は止まず
消えた星たちが何かはなしています
空には
傷があって
そこに
焦点を合わせてばかりです

本屋に立って
トイレに行きたくなった瞬間
置き去りにしてはならないものを
置き去りにしてきた気がしました
時が目を回すのです
死んだものたちが
立ち上がる夜があるのです
何もかも疑い
何もかも信じたくなるときも
空の傷に目がすいとられます
詩にたいです
風がまた吹きました

透明な命にいつちかづけるでしょうか
そして僕の命は…
ささやかな物思いの雨の中に
うずくまるだけでしょうか?

また風が吹いた

サイレンが耳にすいつく夜です


自由詩 夜の透明な命 Copyright 石川和広 2005-09-21 23:06:57
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