ひとつ まばゆく
木立 悟





雨のなかのふたつの星が見つめあい
ちぎられたもの 離されたものを結んでゆく
音の生きもの
風の音の生きものが
白い木々のはざまに響き
銀に濡れた視線を向ける


建てられたばかりの新しい家から
もう誰もいなくなったはずなのに
ざわめきはずっとつらなりつづけ
夜から朝へ
夜から朝へと
壁をこぼれ落ちてゆく


地平線から
水平線から
溶鉱炉のような光と音が
絶えることなく打ち寄せて
うるむ間もなく
風と涙を連れ去ってゆく


かすかにまばゆい音をたて
雨は雨を削っている
閉じかけたまぶたと
ひらきかけたまぶたの違いの上に
飛沫と波紋は降りおりる
冷たい花粉に降りおりる


雨の足跡は朝に残り
標を暗く隠している
あたたまる前の空のなかを
かがやく粒の印に逆らい
たなびく原の流れのほうへ
梳くように梳くようにつづいてゆく


腕や光や
ちぎれた羽が
からだから無数に現われて
ただひとり
ただひとりだけを
ただひとつに抱きしめている








自由詩 ひとつ まばゆく Copyright 木立 悟 2005-09-19 21:20:00
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