間奏曲
塔野夏子

プラットフォームで 日陰のベンチに坐り
僕は詩を書いていた
いいや君への手紙だったのかもしれない

白い午後
静かな校庭のこと
いたいけな青空のこと

いいやそんなことじゃない
間奏曲ばかりが美しいこの日頃
あの緑の高台からの
見晴らしは今でも良好 か?
そんな筈は無いだろう

ひたいの中の青白い舞踏が終わらないので
レールの彼方に見える鉄塔の波長に
やたらと神経が共振してしまうので

虚ろな午後
さびしい川べりのこと
もの問いたげな九月の風のこと

いいやそんなことじゃなく
僕は何を 書こうとしていたのだろう!

どのみちそれは書き上げられることなく
ノートは あるいは便箋は尽き
列車は まだ当分やって来ないか
とうに発ってしまったか だった




メールマガジン「さがな。」76号掲載


自由詩 間奏曲 Copyright 塔野夏子 2005-09-19 14:05:38
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