残されて、夏の
yo-yo



日焼けするほどの
残せる夏のしるしもなくて
白いからだが
裸のままでいるようで
ときどき恥ずかしい

私の血は水のように薄くなって
夏はたくさん虫を殺してしまう
土から生まれて土に還る
虫の嘆きは透きとおった音がする
ツク ヅク オシイ
ツク ヅク イッショウ

虫の顔もひとの顔も似ている
生きることと死ぬことの
境いめの空を舞っていた
無数の羽のきらめきが
子どもにかえってゆく夢のようで
おとうさん
おかあさん
目覚めても目覚めても
道が遠いのです

夏が終わったら始めよう
そんなことばかり考えているうちに
いつも季節にとり残されてしまう

ことごとく虫は
羽をかたく閉じて
ことしも季節を越えられない
ツク ヅク オシイ
ツク ヅク イッショウ
誰かが小さく叫んだあとの
空まで届きそうな静寂のなか
羽のない私は
透きとおった無数の羽を踏みながら
とぼとぼと歩くのです





自由詩 残されて、夏の Copyright yo-yo 2005-09-18 11:45:13
notebook Home 戻る