夜とまぶしさ
木立 悟





目を閉じてもつづく光のかたち
夜を甘く噛むかたち
傷が傷を呼ぶかたち
ふたつの音がすれちがい
ひとつの声になるかたち


蒼にそよぐ蒼のしじま
ざらざらとつづく明るい道
巣は空に溶け込んで
蜘蛛だけがひとり宙にある
午後は残る
午後だけが残る
あおむけに反りかえり
夜の双子に耐えている


影から影から
穂から穂から
向かう先なく放たれるもの
立ち昇り 蒼にさえぎられ
ひらき ひらかれ
ひろがりゆくもの


からだのまわりに集まる滴が
次々と小さく分かれつづけ
もうひとつのからだのかたちになり
歩み来る姿 歩み去る姿に微笑んで
夜を抱いては抱いては砕け
砕けてはもどり
砕けてはもどり
まぶしく まぶしく
あふれながれる


ゆうるりと降りてくるひとひらが
散らばるひとかけらひとかけらに重なり
かつてそうであったかたちに立ち上がり
ひとりの午後の手
夜の双子の手をとって
傷つきやすい硬さに満ちた
星あかりの道を歩いてゆく









自由詩 夜とまぶしさ Copyright 木立 悟 2005-09-17 20:32:42
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