夜とはばたき
木立 悟





傾きに鳴る傾きに沿い
鏡は鏡の名を告げる
はざまは全と無にかがやいて
重なりと輪のうたをくりかえす


背後から照らされ
影は躍る
足踏みの姿に揺れながら
より速い夜を求めつづける


道のなかに枯れ花があり
夜の雲を見つめている
風が連れて来ては連れ去るもの
やがて風をも連れ去るもの


羽のような生きものが
雨のあとの土にあつまり
白く白くはばたいて
飛べぬまま夜をすぎてゆく


それはおまえにはならんだろう
それはおまえとはちがうだろう
誰かがふいにとおりすぎつぶやき
左目をしびれさせ持ち去ってゆく


夜はともすればふたつです
夜はともすればあなたです
夜はともすればひとつです
夜はともすればありません


聞いたことのあるうたのつづき
どこで聞いたのか思い出せないうたのつづきが
どこからかどこからかやって来て
夜の明るさを撫でてゆく









自由詩 夜とはばたき Copyright 木立 悟 2005-09-15 13:57:10
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