たまねぎのふじょうり
ブルース瀬戸内

いっこのへいぼんなたまねぎが

うそいつわりのないほんとうの

じぶんのすがたをそのめでたしかめようと

おそるおそる、いちまいかわをめくります。

そうして、すこしみがるになってみても

まだまだうそくさいそんざいなきがして

もういちまい、もういちまいとかわをめくります。


そんざいなんてといはじめると

もう、きりがありません。

でも、しりたいのです。

どんなことになっても

ほんとうのほんとうのすがたをしらないと

じぶんがたちゆかないのです。

たっていられないのです。


たまねぎはすっかりみがるになって

さいごのいちまいをめくります。

ついにすべてがあきらかになるときです。

でも、めくったとたん

たまねぎはとうとうなくなってしまいました。


ほんとうでないとされている、
かわのすべてが
たまねぎのすべてが

あたりいっぱいに
こせいにあふれるにおいをのこして
ちらばっています。

こんな
たあいもないふじょうりをふくんだにおいに
わたしたちはしばしばなみだします。


自由詩 たまねぎのふじょうり Copyright ブルース瀬戸内 2005-09-15 01:36:30
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