たまねぎのふじょうり
ブルース瀬戸内
いっこのへいぼんなたまねぎが
うそいつわりのないほんとうの
じぶんのすがたをそのめでたしかめようと
おそるおそる、いちまいかわをめくります。
そうして、すこしみがるになってみても
まだまだうそくさいそんざいなきがして
もういちまい、もういちまいとかわをめくります。
そんざいなんてといはじめると
もう、きりがありません。
でも、しりたいのです。
どんなことになっても
ほんとうのほんとうのすがたをしらないと
じぶんがたちゆかないのです。
たっていられないのです。
たまねぎはすっかりみがるになって
さいごのいちまいをめくります。
ついにすべてがあきらかになるときです。
でも、めくったとたん
たまねぎはとうとうなくなってしまいました。
ほんとうでないとされている、
かわのすべてが
たまねぎのすべてが
あたりいっぱいに
こせいにあふれるにおいをのこして
ちらばっています。
こんな
たあいもないふじょうりをふくんだにおいに
わたしたちはしばしばなみだします。