名前の無い風
恋月 ぴの

透明な箱の行き先ボタンを押したところで
君の行き着く先は選択出来ない
目をかっと見開いていても
ロバのように耳をそば立てていても


透明な箱の行き着く先は
既に決まっている


透明な箱はちゃんと知っている
人生の在り方なんて
すこぶるいい加減でさ
自分では何も決断出来なくて
面倒な事は誰かに押し付け
被害者意識に凝り固まりたいだけなのを


透明な箱の中に押し込められ
右往左往する君は
光りの差し込む先を出口と勘違い
殺到するその先で待ち受ける
絞首台への13階段


至福に満ちた楽園にでも行けるかのように
喜び勇んで階段を駆け上る


12段目で後悔しても既に手遅れ
気が付いても既に手遅れ


ぶらぶら揺れる
名前の無い風に煽られ
ぶらぶらぶらぶら揺れている


自由詩 名前の無い風 Copyright 恋月 ぴの 2005-09-13 06:40:13
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