夏からの手紙
ベンジャミン

九月
雨が多いのは毎年のことで
それはさしてめずらしいことでもない
のかもしれない

秋というにはまだ早く
ちょうど残暑という言葉があてはまる
そんな晴れの日も多い
九月


家の郵便受けは壊れていて
小さな家のかたちをしているのだけど
その扉にあたる部分の金具がとれてしまっている
だから
雨の日には雨が吹き込んでしまって
中の郵便物をぬらしてしまうのはしょっちゅうだ


九月
何処からともなく
一通の手紙が届いていたことに
気づいてはいたけれど

何となく放っておいた
それは吹き込んだ雨に何度もぬれていて
同じように何度も渇いて
九月


それはもうしわくちゃになってしまったけれど
書いてある文字など
とうに読めなくなってしまったのだけれど

それが夏からの手紙だということは
たぶん匂いで知っている
九月

    


自由詩 夏からの手紙 Copyright ベンジャミン 2005-09-13 00:11:25
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