悲しい摩擦音
カンチェルスキス






 口笛するけど音が出ない
 きみはうつくしい食器を洗った手で
 一枚の銀紙を折り畳む
 訊ねようとしたことを
 思い出すために
 つらい過去も思い出し泣いた
 カレンダーから数字をなくせば
 何が残るのだろう
 簡単に方角を言い当てることなど
 できないけど
 太陽の沈む空は西
 一瞬の炎は
 マッチを擦る時の
 悲しい摩擦音によって
 生まれた
 手さぐりの午後に
 傷のような雨が降りはじめる







自由詩 悲しい摩擦音 Copyright カンチェルスキス 2005-09-12 16:50:15
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