やさしい活気が乱暴に穴を開けた
カンチェルスキス





 ぼくたちの見えるところ見えないところ
 繰り返される欲望の衝突のおかげで
 ぼくたちはもぬけの殻になってしまった
 風鈴がチリンと一つだけ鳴る
 意味を終えた紙吹雪のように
 ぼくたちは吹っ飛んでいってしまう
 おもちゃ箱をひっくり返して火をつけた
 燃えてしまえば急にわかる
 全部大切なものなんかじゃなかった
 有り金を差し出したら気持ちが楽になった
 絵描きでもなればいいのに
 みんな絵描きでもなればいいのに
 描いた絵を燃やして描いた絵を燃やして
 その燃えカスで新しい絵を描こう
 空を飛んだら撃ち落された
 地面って硬いんだ
 何度でも死ねるぐらい硬いんだ
 怒りを差し出したらあの娘が泣いた
 ナミダ流しすぎて粗くなった頬を
 撫でるためだけに存在する
 ぼくの小さな手
 ぼくの手が木漏れ日のように降って
 あの娘の雨がやむ

 
 ぼくたちは見かけによらず先がないよ


 やさしい活気が乱暴に穴を開けた




  


自由詩 やさしい活気が乱暴に穴を開けた Copyright カンチェルスキス 2005-09-12 15:00:09
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