火の鳥
千波 一也



幾千幾万の人波は終わりを告げない


すれ違う一つ一つの顔を
忘れる代わりに
白の背中が
鮮烈に映える

本当は
黒であり
青であり 
赤であるかも知れないが
白で良い
すべて白で良い
わたしは
背中を確かに覚える

燃え尽きた色だね、と
正面の活火山は笑うだろうか



いま、火薬という名の運命が夏の夜空を駈けのぼる



四方を囲む山々は
その足音を跳ね返し
散りゆく音を一つに束ねて
轟音を織り
地へ注ぐ
そして歓喜は呼応する

密閉された盛夏の地上で
拍手と 舞と 万歳と

宵闇の底で活火山は
ちらり と 横顔を見せた
一つも動かず
然れど黙らず



不意にわたしは
巨大な棺のなかに在ることを自覚した
いま、火種は放られたのだ



あまたの刹那は
何処へと還るのだろう

輪廻は優しき永劫かも知れない

あまたの刹那は
何処へと還るのだろう



幾千幾万の人波は終わりを告げない



潤んだ瞳を
次から次へ 空へと向けて
遠く遙かへ 駈けのぼってゆく
翼をもたない
その
白の背中





自由詩 火の鳥 Copyright 千波 一也 2005-09-12 02:49:58縦
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