異明
木立 悟





空が地よりも明るい夜に
ひとり鉄路の内周をゆく
なだらかな緑の
揺れつづける闇


雨と雨のあいだが泡立ち
ひるがえる白
ひるがえる光に
動かぬものは四角く抱かれる


原をわたる火
草を濡らす血
暗がりをもがき
川へと至る背


眠りが満ち
静かになる
さえざえと目深に
黄金は咲く


鏡の両腕に夜を抱き
鏡のなかに増してゆく火と
無数の雲間のつらなりと
音のない原のざわめきを見る


またたきは遠く
草に隠れる
流れの先へ先へと向かう
窓のかたちの夜のあつまり


水とまばたき
まねる きんいろ
ほころびうた さざなみ
重なり離れる指の秘めごと


幼い鳥が手をつなぎ
声の未明を呼ぶころに
去りゆくものの背のうたは
金に緑にはばたいてゆく










自由詩 異明 Copyright 木立 悟 2005-09-11 20:10:38
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