降り来る言葉 Ⅶ
木立 悟



花を負う花が雀になり
鴉にやさしくついばまれている
音は聞かれる間もなく火となって
水だけを求めて落ちてゆく
別の音が別の音を得て空に生まれ
二羽の鳥の背の上から
川に沈む火を見つめている


白い朝の光が吹いて
地に落ちた火を呼び寄せるとき
見える鳥と見えない鳥が向かいあい
空ははばたきのかたちに満ちてゆく
葉は繁り 枝は下り
誰も乗らない遊具をつつむ
壁も土も静かに隠れ
置き去りの春の子供さえ
風のなか緑に浮き沈む


雨の降ることも
止むことも
空にひろがる
なにかをまるく抱くねむり
なにかとともに在るかたち
たくさんの水の子供が現れて
手に手に金の火の穂を持って
朽ちてゆく色のひとつひとつに
ただ一度だけ
ただ一度だけを呼び覚ます


午後の光に消えてゆく
窓の内 窓の外
そして窓
窓辺に立つものもまた消えかけながら
かがやく音を見つめている
かがやく羽を見つめている


取り外された遊具
取り残された支柱
枝葉のように降りてくるもの
花でありそして鳥であるもの
季節が見つめる緑のなかに
ねむる雀と鴉のかたち
かがやく光の切り絵のように
空へ 空へ ひろがってゆく





自由詩 降り来る言葉 Ⅶ Copyright 木立 悟 2003-12-29 22:09:42
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
降り来る言葉