だんだん無感動になってゆく
Monk



1/7

となり町まで歩いていく。
交差点で人がオートバイに跳ねられるのを見かける。
スローモーションで再生はされなかった。
帰りは地下鉄に乗った。
人がオートバイに跳ねられるのは見かけなかった。


2/7

殺し屋の友達が訪ねてきた。
父親が星を追いかけて旅にでたことが発覚したので殺し屋はやめざ
るを得ないのだ。
黒いコートとピストルをアルバイト代で買い取ってあげた。
殺し屋でなくなった友達はまだ太陽に不慣れらしい。


3/7

難問を抱えた人々が次々と部屋にやってくる。
「わるいけど僕にはわからない」と言うとみんなメソメソと泣き出した。
誰も彼もに論文を笑われた科学者も
整形に失敗に失敗を重ねた女の子も
みんな
世界中の難問がメソメソと泣き出すのだ。


4/7

「わたしのどこが好きなの?」と恋人が問いただす。
「むねの蝶」と答える。
「これは命の次に大切なものなのよ」と恋人はどなる。
悪いと思ってあやまった。
すると恋人は少しだけ蝶に触らせてくれた。
とりあえずうまくいきそうな気がする。


5/7

映画を見に行った。
近所のパン屋の娘が出演していた。
パン屋の娘はパン屋の娘の役で数学者と恋に落ちる話だった。
帰りに数学者のふりをしてパン屋に寄ったら新発売の
「二等辺三角形パン」ごしにウィンクされた。
しかたなく娘を誘いだし面積の話を一晩中することにした。


6/7

真夜中の殺意は宅配ピザの兄ちゃんに向けられる。
赤いピザソースがうまい具合にカモフラなのだ。
僕は友達から買ったピストルを構える。
でも弾丸はこめられてなかった。
結局その日ピザは届かない。
きっとその前の宅配先では弾丸がこめられていたんだと思う。


7/7

朝の駅ではたくさんの人が階段を下っている。
オフィスの天井を見上げると蛍光燈が敷き詰められている。
お昼の喫茶店には小さなテーブルに過剰なランチが並んでいる。
僕はパソコンの入った重たい鞄をビルの上から放り投げ
どうか誰も怪我しませんように、と祈る。



自由詩 だんだん無感動になってゆく Copyright Monk 2003-12-29 00:15:24
notebook Home 戻る