藁の基地
蒼木りん

いまは
稲刈りが済んでも
束ねられない藁束が
三十年ほど前には田んぼの隅に
何十と積まれていて
秋には
それが子どもの遊び
それで基地を作った
床を敷いて
階段を作って
壁を囲んで
屋根もつけた
子ども四、五人入れる
塵っぽい基地
藁くさい
ちくちくする
洗濯しても落ちない
藁くずだらけの服になって
藁崩して
叱られた

いまは
十字架のような棒を立てて
棒だてもしない

家族総出もない
こじはんもない

稲刈りが終わると
田んぼは寂しいな




※ こじはん = 農作業の合間に挟む休憩時間。お茶を飲んでお菓子や
おにぎりなどを食べる。


未詩・独白 藁の基地 Copyright 蒼木りん 2005-09-03 23:09:38
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