さよならとこんにちはの街で
The Boys On The Rock

その街では
いつも暖かな懐かしい風が吹いていて
まるで中央アメリカの芳醇な空気のよう
勝手知った家のスキャンダルの扉は
決して開けられることはないので
ぼくのトウモロコシはすくすくと育つのだ
街を見渡せば
綺麗に着飾ったドラッグ・コーン達や
大学生のイカニモ・コーン達や
サラリーマン風のクローゼット・コーン達が
七色の葉っぱを
風に揺らしている

彼らを遠巻きで否定的に見ていたぼくと
恋と夢に破れ泣きながら歌う
ちょっと前のぼくを
やさしく慰めてくれた彼ら
そんなとき ぼくのトウモロコシは
ぐんぐん育ちロケット・コーンになることも
小さな落花生の実のままであったこともあった
だが 有象無象の
あまた数千のランパ・コーン達が
ぼくに性的魅力を感じ無いことはなかった
彼ら
愛と技の無数の魔の手が
ひとりきりの
ぼくのトウモロコシを愛するとき
仏にえぐられた深い傷を
ネオンとアルコールと精液を代償に癒してくれた
そして ぼくは
シティホテルの一室で朝を向かえ
まるで天使の受胎告知を受けたマリアのように
晴れ晴れとして目覚めるのだ
だが ベッドの中には
ぼくともう一人分の体温しか残っていないだろう
ぼくの若いトウモロコシは元気だが
それも遍歴の一ページに終わってしまうのだ
モーニングコーヒーを啜りながら
彼らのこと考えてみると
初恋の甘ったるい感情が沸き起こってくる
そして唄いたくなるのだ
さよなら シニカルコーンたち
昨夜一緒に寝た君とは二度と寝ないだろう
今日は別の君と寝る
こんにちは マイスイートコーンたち
暖かな懐かしい風の吹く街で
いつまでもぼくらは愛し合っているのだ


自由詩 さよならとこんにちはの街で Copyright The Boys On The Rock 2005-09-03 12:06:03
notebook Home 戻る