アイラブ
フユナ
港に来たら、花は散っていた
ノウゼンカズラが
地上に口付けている
おぉんおん、
おぉんおん
遠くではまだ咲いている
向こう岸の工場の灯だ
向こう岸の工場が
何を造っているかは知らない
夜毎煙突は烟り、
工場にはふだらくの後光
私は肉を取り出して
岸に座って咀嚼する
おぉんおん、
おぉんおん
アイラブ
私は思う
油にまみれ
肉を食みながら
濃い橙の暖かい灯
工場は
美しいものを造ってないかと
アイラブ
私は呟く
血を滴らせ
肉を食みながら
この肉は固く
もう傷み腐っていくと
ああ、
なにも意味しない工場の音、
小さなアイラブ、も内包しない
透明な騒音
いずれ行くことも
帰ることもなくなる
波の呻り
と、
アイラブ
私は屹立する
もう腐り、朽ちていく物事
じわじわと、傷んでいく鎖たち
油で濡れた手、
それで髪を整え
朽ちた花を挿す
この夜半