喫水線の住人
ソマリ

深海に響くサイレン 旋律のようなうねりはやがて波へと


呼吸ひとつ躊躇うほどの静寂に抱かれて眠る幼い嵐


海水に混ざれぬ雨が沈みゆく マリン・スノーの一粒として


なにもかも蒼い世界でその赤は直視できない眩しさだった


藻屑片ひとひらほどの秘め事が真珠を真似て仄かにひかる


水底で想いを告げる歌ならば波の数だけ知っているのに


溺れるという言葉さえ判らずに無様にもがき剥がれた鱗


ゆっくりと 水没していく熱帯夜 かじかむ心臓、ひとつまたたく


泡は消え 潮の香りが残るだけ あのひとが泣いてくれますように




短歌 喫水線の住人 Copyright ソマリ 2005-09-01 08:35:53
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