逆光の丘
千波 一也



その階段は
まぎれもなく階段であった

手入れの行き届いた草木

光を反射する 白の像

そこは
入り口にも満たなかったのだ

まぎれもない階段の途中
この両目は 
風の遊びだけに
誘われて
入り口は沈黙して
いた



修道院は
その広さを 慎ましく囁いており
旧き建造物でありながら
新天地へ続くまばゆさを
しずかに絶やさずに
いた

猛暑のしたで
すべての窓は閉じられており
敬虔なる空気へと寄せる想いは
尚更に
美化されてゆく
うっすらと
汗を匂わせる私なのだから
それは至極当然のこと



映画の場面が数枚、脳裏をかすめた

はっきりとは見えなくて
のどが
強く
渇く

欲求も程々にせねば、唯みにくい



下りの階段の足音に
息づくものは
気の毒なほど 
鈍い影 
軽い影




恋人とつなぐ手の反対には
ビニール袋
敢えていうなら白、の
その中身は
甘い甘い砂糖菓子

修道女たちの
手作りらしい




自由詩 逆光の丘 Copyright 千波 一也 2005-08-31 01:48:55
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