去音
木立 悟




響くまま 風の輪をたどり
足もとは枯れ
緑にそよぐ
枯れては緑
枯れては緑の音を聴く


空にあいた鉄の穴を
夕べの羽が通りすぎる
響きは響きを消しては生まれ
まるい音のうしろには
さまざまな透明が流れてゆく


右目の鏡に映るもの
雲と羽を混ぜるもの
再び離れ重なるもの
かたちの奥にあるかたち
空から空から降りおりて
左目の窓に積もるもの


誰もいない庭をぬけ
家々の背が立ちならぶ道
はざまに花がほどける日陰
ひとつふたつ 熱の足跡
姿の見えない子らの声
ゆがみもひずみも
ゆらぎの手をとり
はらりはらりと道を曲がる


つま先立ちの裸足の群れが
熱の行方を向いている
枝葉のなかを落ちてゆく風
低い空の楽譜をめくり
次の光を奏ではじめる








自由詩 去音 Copyright 木立 悟 2005-08-28 13:27:52
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