ピラミッドの匠
ブルース瀬戸内

果物屋のおばちゃんは

リンゴでピラミッドを作って

バナナにそれを眺めさせて

スイカでバナナのための日影を作ります。


どこよりも甘いグレープフルーツを

毎日同じ男の子が買いにきます。

男の子の未来図は

グレープフルーツを食べている時に

最も鮮明になります。


どこよりもジューシーなライチを

毎日同じ女の子が買いにきます。

女の子の美しさは

食い気が先導しているのかもしれません。


どこよりも早く店を開けて

どこよりも遅く店を閉めるおばちゃんは

皆が果物を選ぶ時の顔が大好きだし

リンゴの仕入れが間に合わなかった時に

分からないように他の果物を使って

ピラミッドを作ってしまう自分に

惚れ惚れとするナルシストでもあります。

そんな様子すら

バナナは眺めなければいけません。


自由詩 ピラミッドの匠 Copyright ブルース瀬戸内 2005-08-23 23:01:00
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