虫の知らせ
服部 剛

旅先の小倉のホテル十一階
レストランで朝食をとっていたら
目の前のガラスの向こうにゆらゆらと
緑に光るカナブンが飛んできて
ハムをくわえた僕をのぞいて降りてった

「 よくもまぁこんな高いところまで・・・ 」

かつての僕の恩人が

「 草はすくすく伸びるから
  成長をあらわす色なのよ 」

と言っていたのを ふと 思い出した 

僕の住む鎌倉から
遙か遠くにつながった君の住む小倉の空の下で
今まで別々の雨と風の吹き荒れた長い日々を
瞳に光る涙を浮かべ
じっと口を結んで耐えて
くぐり抜けてきた君と
初めて顔を合わせる今日

人生の中のおよそ「1日/2万9千200日」である今日という日を境に
想うことの少し似ている僕等が志す「夢」よ

十一階の窓までゆらゆら昇ったカナブンの
日に照らされ光る緑となれ 


 
  *平成17年 8月22日(月)かけがえなき詩友と初めて逢った日に。
   小倉駅から門司港駅へと向かう電車の中にて。 















自由詩 虫の知らせ Copyright 服部 剛 2005-08-23 01:22:45
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