温い空ろ
A道化

温い溜まりへ ひとつ
温い溜まりから ひとつ
蛇口の縁から
温い空ろ の余滴
そこから始まった
輪 は
瞬時に
洗面器の縁で 
終わる

ほら
蛇口の 縁で
ふたつ目が諦める頃
洗面器の 縁で
ひとつ目が 消える
その繰り返しだ

嗚呼、浴室で
そのような、世界の規則的な終わり、の連なり、に居合わせてしまって
どうしようもない順番待ちの連なりを、わたし含む連なりの存在を
軽く握った両方の手を唇に当て甘んじて受け入れる姿勢のわたしは
その姿勢のわたしは、祈りに似ているかもしれない、
似ているのかもしれないけれども
わたしは全く祈ってなどおらず、嗚呼、全く、むしろなんて揺るぎ無い
わたしは、決して祈りではなく、揺るぎ無く、実は、ぬるい空ろだ、揺るぎ無い空ろだ
実は、ぬるい空ろを、空ろを、空ろを、そしてその余滴を、蓄える
体だ

ほら
蛇口の 縁で
幾つ目かが諦める頃
洗面器の 縁で
幾つ目かが消える 
その繰り返しだ

温い空ろの 余滴ひとつ
温い空ろの 横溢ひとつ
の 温み方・濡れ方の模倣
その模倣のわたしは 
いつ 溢れるのだろうか
嗚呼
いつか 
溢れるのだろうか

2003.12.15.


自由詩 温い空ろ Copyright A道化 2003-12-20 06:58:09
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