見られている
石川和広

苦労を取り戻す日々

網戸に半日も止まったセミをみる
見られている
セミの鳴き声に囲まれてそのセミは哭かない
なぜだろう
なぜ止まっているんだろう
網戸ごしにつついてみる。
死んでいない
足が微かに動いている

鳴かない
鳴かない
なぜ鳴かない

飛び出さない



静かだ
脳裏は静かではない
今までのこと考えている
現実は化け物で逃げ切れなかった自分

逃げようとして
逃げられなくて良かった
というところで不意にたたずんでいる

ここはどこ
セミは明日までいきているだろうか
短い命
自分の有限な生
見られている

何かが気持ちに
ああそれは
帰ってこようとしている
予感


自由詩 見られている Copyright 石川和広 2005-08-04 18:46:26
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