いまでも地球は青いの
狸亭


漆のように黒い闇が無限にひろがる宇宙の
おぞましい永遠の闇また闇の中に白い服が
浮かび小さな一点の眼がみつめる青い星の
なんという美しさ神様あれが人類の隠れ家

それにしてもあれは何だろう 水道の蛇口
灼熱の太陽の兇暴な光を一杯にうけている
黒い顔はあんなに幼いのに必死に求める命
の水 十本の細い指がしっかと握り締める

錆びついた配管には一滴の水も出てこない
第三世界では一日五十リットルの水ですら
ままならぬというのに先進国には限りない
無駄がはびこる工業用水や水洗トイレすら

使い捨ての廃棄物の山を築くために流され
何でも商品化してしまう爛れた文明の世紀
炭酸ガス メタンガス フロンガス 溢れ
沸騰する都市の大気は荒廃した大地を招き

侵食された地表は急速に広がり砂漠となる
高度化した情報網は世界に向けて環境破壊
を警告するがこの国には無関心がはびこる
五十四億人の不条理を抱えて爆発する未来

国際会議が繰り返され氾濫する環境問題の
書物が店頭に積みあげられ紙の山を築いて
人々はますます混乱し不安と怒りと笑いの
中で自らの日常を観察してみるのだがはて

目の前に現れるものは全てが全てゴミの素
紙コップ パック食品 ビニール袋 広告
に地方誘致の化学薬品に侵されたリゾート
の完成予想図が目を奪う色刷りの美辞麗句

いまや地球は隅々までも人間の欲望に汚れ
海に浮かぶ難民の舟やら飢餓民族のために
世界の善意が送り付ける救援物資も横流れ
貧しい権力を潤し残り僅かのミルクは更に

絶滅しかけてやせ細った女の身体を甦らせ
生みつづけ死につづけてゆく呪われしもの
天国の闇に頼りなく浮かぶ円らな瞳輝かせ
子らは今日も呟く「いまでも地球は青いの」

 (押韻定型詩の試み 11)


自由詩 いまでも地球は青いの Copyright 狸亭 2003-12-18 09:25:00
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