浸透圧
霜天

帰り道に迷うのは
せめて僕のほうだったらいい
通りすがりで、そっと交わす言葉からは
いつだって真ん中のところが零れ落ちていく


駅の階段を
夏に降りていく
君は一つの呼吸で
手を振るような空の底辺を
飛び越えていく
その速度で、気付けないものを
つかもうとして、手は
オレンジ色の空の隅を
ただ、撫でる

全てに同じになっていく
そんなふうに流れている
交わした言葉を思い出すよりも
間違えていくような、速度を

距離
そう呼ばれているらしい
君はただ黙って
坂道のカーブを、空の方へ
届いていくはずのものを
笑い顔で見送りながら
忘れていったものが
いつまでも、痛む


間違えていくような速度
いつまでもそんな角度
繋がっていく温度は
もう、ここにあるのかもしれない

全てに同じになっていく
そんなふうに流れている
僕らの交わす言葉から
君が夏に降りていく
そんなふうに流れている


そんなふうに流れている


自由詩 浸透圧 Copyright 霜天 2005-08-02 02:13:32
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