とろうる
みい

いちばん最初にその音を聞いたのは
体育の時間
運動場のまんなかで
野球をしてるみんなにまざって
ちっちゃい歌をうたった
こんな歌、誰にも聞こえないよーって
言うみたいに ほら
誰かがホームランを打った


とろうる。
耳の奥深くで聞いた
あたしだけのちっちゃい歌は
鼓膜に不透明のペンキを塗って
からだ全体に染みていった
カキン、というバットの金属音は
不透明の壁にはねかえる

ホームランは目に見えるだけで
すごいとは思わない

バットを握っていたきみが
放課後のチャイム の前に座っている
そうじしなきゃ、って
目を
そらす今日をわたしは投げ出し

さらさらと動くほうきで
いくらでもきれいにする
今日いちにちあったことたくさん
今日いちにち感じたことたくさん
ほこりにまみれながら
もういいや、と思うまで
掃いて
掃いて
掃いて

とろうる!


ゆるり
きみからもらったリング
親指でもすかすかで
すかすかと銀色のすきまに
できれば埋めたいなと思っていたものがあった
あたしにもきみにも
関係のあるもので、なあんだ。
と口に出して言うとなぞなぞみたいで
でももっと簡単だと思う
って、それがヒント


とろうる。
あなたの目にうつるのがそのまま
あたしのスタイルです
そのうちでいいから
あたしのからだをめぐる血液に
音をたてずにキスをして


自由詩 とろうる Copyright みい 2003-12-17 21:36:15
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