便所童
チアーヌ

その駅のトイレには
便所童が住んでいる

とても疲れて寂しい夜
わたしは酔っ払って
その駅のトイレに寄る

3つある個室の真ん中に入ると
そのうち
両脇から
声が聞こえてくる

「お兄ちゃん、このトイレ和式だよ!」
「こっちは洋式だったよ」
「おしっこしずらいなー」
「しょうがないだろ」
「お兄ちゃんは何してるの」
「今うんち終わって拭いてるところ」

わいわい
わいわい
しゃべってる

何歳くらいなんだろうな
幼児と小学校低学年のお兄ちゃんって感じかな

わたしが個室を出ると
両脇はしんとして
誰もいやしない
いつものことだ

こどもたちが
どこかへ行く前なのか
どこかから帰って来たところなのか
わたしにはわからない

とても疲れて寂しい夜
わたしは便所童に会いに行く

声だけでも
かまわない


自由詩 便所童 Copyright チアーヌ 2005-07-31 22:16:30
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