白身のさかな
恋月 ぴの

僕は一切れ100円の白身さかな。
美味しそうな気配を漂わせ
他の仲間達とアルミのトレイに並んでいる。

けれど、僕は「タラ」じゃない、
深すぎる記憶の底から引きずり出された
名も無い「ただの白身さかな」。

下手な冗談で君の気を紛らわし
アツアツのフライになれば
タルタルソースがよく似合う。

そうさ、僕は夜毎、君のハシに掴まれたいだけ。
ちょうど、お腹のあたり
真っ二つに引き裂かれては
君の湿っぽさに潜り込む。

もっと…、唾液の甘さに
僕の尾びれ、記憶の底で微かに震える。


自由詩 白身のさかな Copyright 恋月 ぴの 2005-07-25 16:22:25
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