八月
大覚アキラ

今夜
ぼくの知らないどこかの街に
一足早く八月がやって来るそうだ

寝苦しさに耐え切れない人妻たちが
全裸で街中を駆け回り
路上駐車している車に火を放つ

コンビニでぼんやりと
成人向け雑誌を立ち読みしている男どもは
片っ端から犯され打ち捨てられる

終電に乗り損ねたサラリーマンどもは
スーツを毟り取られ
泣きながらドブ川に投げ落とされる

東の空が明るくなりはじめると
全裸の人妻たちは
憑き物が落ちたようにそそくさと家に帰る

シャワーを浴びて
脱ぎ捨てたパンティを拾い上げ
もう一度それに足を通す

そして
ベッドで眠る夫の隣に潜り込むと
何事もなかったかのように眠る

朝になると
カレンダーは相変わらず
七月のままなのだが







自由詩 八月 Copyright 大覚アキラ 2005-07-25 12:03:34
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