老人と猫
kw

駅前のタクシープールに
老いた男と猫が
向かい合わせに座っている

餌の缶詰を猫が喰い
空き缶は物乞いの貯金箱となる

毛刈り前の羊のような
油色の毛を
肢体しならせ
舐める猫

男は猫になりたかった
裸体を雨滴に曝し
皮膚にこびり付いた垢を洗いたい

過ぎ去る瞳幾人か留まり
猫の体毛を撫で
男の手前にコインを落とす

男は猫になりたかった
欲しいのは慈しみに満ちた手の温もり
冷たい硬貨を失ってでも


自由詩 老人と猫 Copyright kw 2005-07-22 13:41:34
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