ゴモラ(怪獣詩集)
角田寿星

 はじめに断っておきますが、これはオリジナルではありません。
 格闘家の前田日明さんが語った少年時代のエピソードがあまりにも
 いい話だったので、詩にさせてもらいました。
 もちろん、ご本人の了承はいただいておりません。すみません。
 ちなみに前田さんは、ウルトラマンがゼットンに倒されたのをみて、
 「オレが強くなってゼットンを倒す」と言って格闘家になったそう
 です。
 いい話や。


いったいどうしたんだろう。
晴れた空の昼下がり 雀がないてる
のどかな いつもの大阪城の前で
ぼくと友達は ぽかんと口を開けて
呆然と立ちつくしていた。

昨日 たしかにここで
ウルトラマンとゴモラが死闘を繰りひろげたはずなんだ。
ゴモラといえば尻尾。
その太くて長い尻尾がしなって
ウルトラマンを打ちつける。
そう ウルトラマンは手も足も出なかったんだ。
強いぞゴモラ。
その時 ゴモラの尻尾で大阪城も
メタメタに壊されたはずなんだ。

でも目の前の風景は何も変っちゃいない。
いつもの雀がチリチリなく公園に
いつもの大阪城がいた。

「絶対来たはずや。聞きにいこう」と ぼくらは
公園を ほうきで掃除してた
おじさんに訊いた。
「おっちゃん おっちゃん
 昨日ここでウルトラマンとゴモラが来て
 大阪城 壊したんじゃないの」

おじさんは 深いシワを
日焼けした頬につくって言った。
「そやそや 実はな 大阪城
 昨日おっちゃん達が徹夜で直したんや」

ぼくらはすっかり納得して家路についた。
来週のウルトラマン ゴモラの後編がどうなるか
大声で話しながら。

もうすぐ夕ごはんだ。


自由詩 ゴモラ(怪獣詩集) Copyright 角田寿星 2005-07-20 22:06:33
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