路上にて
大覚アキラ

自動販売機の陰の
真っ黒な塊がゴソリと動いて
よく見るとそれは
汚れた分厚い毛布に包まった人だった

たとえば
ここが砂漠で
水も食料もなく困っている人と出遭ったのなら
ぼくはいくらかの食料と水を分け与え
街まで彼を連れて行くだろう

たとえば
ここが戦場で
銃弾に足を射抜かれた人と出遭ったのなら
ぼくは彼に肩を貸して支えになり
安全な場所まで彼を運ぶだろう

でも

砂嵐も吹いていない
銃弾も飛んでこない
公園の蛇口をひねれば水が出てくる
この街のど真ん中で
膝を抱えて座り込んでいるその人に
ぼくは一体なにができるというのだろう






自由詩 路上にて Copyright 大覚アキラ 2005-07-20 15:56:25
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