泡立つ未来
望月 ゆき
金魚鉢かすめる涼風の行方知ってか知らずか手招きの夏
逝く春の背中押しつつ背中からはじまるアブラゼミの時間よ
きみがたわむれてた波ならひとすくい両手ですくって頬寄する午後
絵日記をぬりかえる橙色の校庭落書ききみの足あと
遠くの校舎から聴こえるショパンさえ記憶の底に沈む放課後
夕暮れてふくらむ3Dの雲をジャングルジムの上で見ていた
寄せる波音でオブラート状に巻き愛のことばを飲みこむぼくら
すれちがう刹那に並ぶ帆影抱きしめるかのように眠るゆうべよ
逆さまに流れる水のたどりつく先に待つものくずれゆく空
海の群青に消えゆく星座から泡立つ未来を見失う朝