「 そして祇園祭が終わる。 」
PULL.
知らないホテルの片隅で、
丸くくるまって君の寝顔を見てる。
ひとりでは眠れないというから、
毎晩、君が寝付くまで色んな事を話す。
あの鮮やかな初夏の想い出を、君は話したがる。
たった二週間で終わった恋なのに、
まるで二年だったみたいに、
なんどもなんどもいっぱい話す。
おかしいね。
返事をするみたいに頷いて、
君は寝返りを打った。
寝冷えをするといけないから、
はだけたシーツをかけ直す。
あの頃と変わらない、あどけない寝顔。
首筋に残っていた痣は、
もうファンデーションが必要ないぐらい、薄くなっていた。
大丈夫だよ。
明日。
君はここからも逃げる。
そして祇園祭が終わる。