フリースタイル3 (ダンスピープル)
チャオ

彼女達の足がモデュロールを刻む。スポットライトが暗闇のステージを照らす。観客はステージを凝視する。ダンスピープル。彼女達の足が刻むモデュロール。

魅力的なのは妖艶なのか。無印の、無垢の、表情が重なる。彼女達は踊る。ただ、淡白ではない作為的な動作と、無理やりに意味づけされた空白の沈黙の中で。かすかに響く電子音。沈黙が助長される。観客は意識する。「作られた世界」を。

四人の女性のモデュロール。ダンスピープル。彼女達は二組に分かれる。向かい合った「君」に崩れる。崩れた「君」を支える。

一つのことが分かると、いろいろなことが理解できることがある。クロスワードパズルみたいに。出来事は単体で起きているわけではない。複雑にこんがらがって、一つの出来事が現実の世界に浮かび上がってくる。何かを理解するということは、現実を支える暗闇の世界を理解することでもあるかのように。
世界は入れ子状になっている。そして、「君」の動作を待っている。

ステージにある「時間の矢」が観客のそれとおなじ法則ではない。だが、「時間の矢」には法則があり、ステージの彼女達を縛り付ける。
「時間の矢」彼女達の距離を引き裂く。
「無機と有機の境界線」で出来事は浮かび上がる。求める「有機」に対してしがみついてくる「無機」。ステージで、彼女達は期待する。求める「有機」の出来事を。

「時間の矢」が彼女達を切り裂く。放たれた矢を連れ戻すことは出来ない。三人の女性が踊る。一人の女性が踊る。無数の観客は見る。

「無機」が使命ならば、「有機」は運命に他ならない。彼女達の足が刻むモデュロール。支配を許した暗闇。横から突刺す光。ステージの「無機」。観客が椅子から眺める。あるべくして、光は途絶える。あるべくして電子音は鳴り止む。あるべくして彼女達は時を刻む。

ステージが終わる。椅子の上で体勢を整える。彼女達の「時間の矢」と観客達の「時間の矢」が同じ法則に統一される。心に残る像は生きた彼女達の姿、ダンスピープルだった。


散文(批評随筆小説等) フリースタイル3 (ダンスピープル) Copyright チャオ 2005-07-12 19:44:04
notebook Home 戻る