*夕闇迫る*
かおる

摩天楼に乱反射する西日
お堀のみなもを揺らす

ビイドロの巨大なレゴの間に見える空
暮れなずむその時
夕焼け雲が小さな感傷のベルを押す


あの子の泣きべそ顔のほっぺは茜雲
見送り駅のホームで
東に向かう列車を睨んでいた


摩天楼に煌めく灯りは泪のユラメキ


ステッキ片手にゆっくりと歩く老紳士と
白いレースの日傘の御夫人の
長く伸びる二つの影に溶けていった憶いは

       銀色
紅く黒く輝き 透明になっていく
  すぐ脇を
    ランドセルをかたかたさせて
         子供が駆け抜けていった

おうちに急ぐ人々の足音が踏み砕いたのは
零れ落ちたあの時の夢と

そして

なんだったのだろう


自由詩 *夕闇迫る* Copyright かおる 2005-07-12 17:09:47
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