オルガンビール
アンテ


なんとか家に帰り着いて
荷物を投げ出して
冷蔵庫を開けると
それは鎮座ましましていた
深い色の瓶
に貼られたラベルの文字
オルガンビール
顎からぽたぽた汗が落ちた
膝が震えた
あー わたしのわたしの
オルガンビール
耳にこびりついた
彼女の歌声が
また頭のなかを巡りはじめた
慎重に手に取って
瓶を耳にあててみても
胸の鼓動が大きすぎて
音色はよく聞き取れなかった
あー わたしのわたしの
オルガンビール
ふり返ると
ソファのうえで膝をかかえて
彼女が歌っていた
どうしたの
おばけでも見たような顔して
あわてて瓶を冷蔵庫にもどして
扉を閉めた
ねえ そんな銘柄のビール
どこにも存在しないんだよ
別のだれかの声みたいだった
そうね
クウソウ

サンブツだもんね
冷蔵庫のなかから
なにやら音が聞こえた




自由詩 オルガンビール Copyright アンテ 2005-07-12 01:09:13
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