短命の時代がやってくる
大覚アキラ

 この間、地下鉄の中で興味深い光景を目撃した。
 小学校の2、3年生ぐらいの男の子と女の子が、仲良くシートに腰掛けていた。二人はどうやら付き合っている(!)らしく、今度の日曜日にどこにデートに行くかという相談をしていた。女の子が先に電車を降りたのだが、別れ際に「あとでメールするから」と言っていた。

 うーむ。どえらい時代になったものだ(笑)。

 最近のガキどもは、とにかくやたら色気づいている。前述の彼らのように、小学生にもなると彼女・彼氏がいるのはさして珍しくもないようだし、幼稚園児でさえ、好きだの嫌いだのという大人の真似事をして一喜一憂している。そーゆーことは大人になってからの楽しみにとっておきなさい、と言いたい気持ちもあるが、ま、よかろう。

 さて。
 最近のチビッコたちが早熟な理由について考えてみよう。PTA的な推理では「テレビやマンガ、ゲームなどのメディアで、そういう情報が溢れているから、その影響に違いない!」ということになるんだろうね。んで、子供たちをいかにして品位のない情報から守るか、ということに関して、あーでもないこーでもないと不毛な議論に終始するのだろう。

 違うんだってば(笑)。
 きっと、チビッコ早熟化の理由は、そういう次元とはかけ離れたところにあるのではないかとぼくは考えているのだ。

 そう、彼らは早死にすることを運命づけられた世代なのだ。

 詳しく説明していこう(飽くまでも個人的な憶測に過ぎないが)。

 少なくとも、今の日本は人が死ににくい世の中だ。
 長寿国のランキング上位に常に日本が顔を出しているのは、医療技術の進歩と、表向きの平和のおかげだろう。一昔前までは“人生50年”というのが当たり前だったし、さらにもう一歩時代を遡れば、30代・40代で天に召されちゃうことも決して珍しくはなかったはずだ。

 寿命が延びたおかげで、子供が(本当の意味で)大人になるのには、時間が掛かるようになった。20歳で成人っていうのは現実的に見て、今の世の中では無理があるのかもしれない。

 大人になるタイミングが後ろにずれこんだおかげで、結婚→出産っていうライフステージもずいぶん余裕のあるものになった。ハタチそこそこで結婚して子供作っちゃうのは相変わらずヤンキーの方々ぐらいのものだろう。

 昔むかし、男子は15歳で元服だったし、10代半ばで結婚して子供をつくるなんて珍しくもなんともなかった。
 でもそれって、“みんな早死にだった”っていうのが一番の理由だったんじゃないだろうか。現代なら簡単に治った病気も致命的なものだっただろうし、栄養面・衛生面から考えても、今よりも“死に至りやすい”ファクターは山ほどあったんじゃないだろうか。

 人生のスケールが40年か80年かという違い。これってすごく大きい。
 80年の人生ならば30歳で結婚して子供を作ってもオッケーだけど、40年しかないとなったらそういうわけにはいかないでしょう。きっとみんな焦って子供を作るはずだ。種の保存は人類にとっても最大の命題の一つだろうから。

 ところで、モノの本によると、突発的な事故死や自殺は別にして、遺伝子を調べると“どんな病気に罹って・いつ頃死ぬか”っていうことが、すでに遺伝子にプログラムされているらしい。当然、生活習慣や環境による不確定要素は多分にあるんだけど、おおざっぱにいえば寿命がわかっちゃうらしい。

 遺伝子にそういう情報が書きこまれているということは、意識(アタマ・心?)は気付いていなくても、遺伝子(身体・本能?)は知っているっていうことだ。ぼくが今のチビッコたちを“早死にすることを運命づけられた世代”であるという根拠はそこにある。

 ぼくの推理では、こうだ。
 今の小学校低学年あたりから下の世代の子供たちは、想像もつかないような化学物質による複合汚染を受けている。これは間違いない。数え切れないほどの食品添加物を母親の体内にいたときから摂取しているし、食物連鎖の頂点で化学物質に汚染された食物を数世代前から食べ続けているのだから。
 そして、そのせいで彼らの大半が、ある一定の年齢までしか生きられないほどの、なんらかの致命的な病気を発症する可能性を持っているのではないだろうか。本能はそれを察知し、早い時期からホルモンを分泌しまくり「とっとと相手見つけて、早いとこ子孫作れよー!」というシグナルをバンバン送っている、というわけだ。

 最近のチビッコが、ガキんちょのくせに色気づいてるのは、テレビやマンガのせいなんかじゃなくって、彼らの本能がそうさせているってワケ。小学生になるかならないかっていう頃から、(下世話な言い方をするなら)子作りの相手探しをしてるってことだ……うーん、まいったね。^^;

 なんだか月並みなアンチユートピアSF小説みたいな展開になってしまった。でもこれって、まんざらありえなくはない気もするんだけどなぁ。


散文(批評随筆小説等) 短命の時代がやってくる Copyright 大覚アキラ 2005-07-10 13:25:03
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