飛ぶ
「ま」の字

               ―飛ぶ そらを
                びゅうびゅうと風の音を聴く


ルルる
おお
手をひろげ
風を身いっぱいにうける、ルル
はてぞない世界を 
何ひとつもない この上を 
風の期待にこたえる ルる ことは
耳朶も 眼球も この 指のさきまでも
赤 青の 細流うつくシく 透けだし タ、 タタタァ!
(おお、反った指のさキザキから ものも かたちも ヒュる、ルルる!
丸みオびながラニ 大地はるかにひろごり
爽やかに かぜ ひかり
が 
ああこの身に ながリこむル とは!

僕の亡き

はびゅうびゅうと墜ちてし 
石の
哀しヵ
地上にちいさな地蔵と影

落下音が
大洋にさびしくひとすじの尾を曳いたあと
爆心の地に眠りこむひとつの臓器
ゆめだけがのこる そらをとぶ と

この飛行者には
防護服がない 時計がない 識票がない
ポケットの手記からいっさいの記述は消え
黄ばんだ地図はやぶれ散り
喉に ゆびに絡みついたこひびとのロケットをも失くしてしまっている
ああ宿命!
おまえには天が暦がわりに与えた
宿命もないと

 広漠としてとめどないゆうぐれが溢れテい

 遠雷

まっくろにたちあがる積乱雲のうえを

ゆく


自由詩  飛ぶ Copyright 「ま」の字 2005-07-09 20:46:41
notebook Home 戻る