印旛沼サイレンス
馬野ミキ



あじさいの花の名前を教えてもらい

それから漢字では紫陽花と書くのだとまるでせかいに沈黙があってはいけないのだ、というようにきみはぼくの手を引いて喋り続けるから、

印旛沼サイレンス


ちびっこ広場の丘の頂上できみはちびっこのように意味のわからない詩論を語り

ぼくはきみをうっとおしく思ってしまう前に

君のてを引いて代打でホームランを打つから見ててといって駈けてゆくけれど

ネクストバッターズサークルでどっちのチームにも所属していないことに気付いて

自分の名前だって分からなくなるから

君に抱きついてきっすをする気持ち余り透けたきみの首筋の血管を噛んだらきみは、

だまって抱きしめてくれるから









ぼくはホームランの意味を知らない

きみもきっと知らない












誰かが重要な会議に遅刻したみたいに大急ぎで三塁ベースを蹴って駆け抜けていくけれど



ぼくたちは



せめてファウルボールが当たらない梅園辺りで



いつか二人の星がみえる展望台のことを話しながら



深くゆっくりと呼吸をして




もう一度自分たちの名前から思い出すところからはじめ
































わたしは、あじさいの漢字の書き方をきみに聞く
















自由詩 印旛沼サイレンス Copyright 馬野ミキ 2005-07-06 20:09:38
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