疾走
霜天

飛行機の降下
街外れの丘の上で
シャボン玉を生産する子供の頭上
地面すれすれの疾走
弾けていく無数の音は
つかみ損ねるよりも速く
私たちの隙間に落下していく


間に合わないということはない
追いつけないということはない
我家に侵入を許した季節は
予想通りの服を着ている
クーラーが低く唸って
まだ遠い夜を警戒している


飛行機の降下
やがて私の街の上まで
掠めるようにして追いすがる姿に
もう誰も振り向かない
ただいまとさよならを混ぜたような仕草
それは確かに私たちの歩幅より遠くで
時計の針の揺れ幅に、間に合っていく


青い顔をしている
空がゆっくりと落下してくる
誰かの忘れたソーダ水の向こう側
弾ける無数の音の隙間で
確かに季節が落下していく


自由詩 疾走 Copyright 霜天 2005-07-05 16:39:42
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